おまけ
外出中であったにも関わらず、
ほんわかとした好き好きモードでいたせいで。
思わぬ奇跡が起きてのこと、
本来ならば物騒な薬物だったはずが、
極楽浄土謹製の“桃源湯”という万能薬へと
有り難いやら はたまた端迷惑なやら、
勝手に転変してしまったらしくって。
そんなところから引き起こされたらしい、
今回のすったもんだは、
当事者のお二人こそ
ブッダが連れ去られかかった
今日本日からの関わりだったが、
『竜二さんたら、
草野球をしたあの日にもう、
私たちを探してる気配の話を聞いてたらしくてね。』
何で黙ってたんだろかという下りは、
後日に梵天さんから
“グッドアンサー”をいただくので、今はまま置くとして。
何だか今日はバタバタしちゃったので、
呉服屋さんへのお出掛けは明日へ回して、
アパートへ戻って来てしまったお二人であり。
冷蔵庫から取り出した麦茶のクーラーポットへグラスを添えて、
卓袱台までを運んで来たそのまま、
甲斐甲斐しくもグラスへそそぎ分けておれば。
そんなブッダの手を取って、
「車へ連れ込まれてしまったのは、
怖かったんでしょう?」
イエスが今になって訊いてくる。
男らしい作りの手の頼もしさにうっとりしつつ、
何の話?と 柔らか福耳を揺らして小首を傾げる愛しい人へ、
「ブッダが攫われてから、
指輪があのね、ひやって冷たくなったの。」
みぞおちを押さえつつ告げるイエスで、
だからきっと
怖い想いをしてるんじゃないかって案じたんだよと、
真剣なお顔でもって言いつのる。
「あ…。//////」
そうかだからかと、
今になってブッダの側にも理解が追いついたことがあり。
唐突に、それこそ力技で引き剥がされたような格好で、
離れ離れとなってしまった二人だが、
イエスが自分を呼ぶ声が届いたことで、
ブッダの覇気がずんと増しもして。
結果、スライドドアをガルウィング仕様にしちゃったものの、
“てっきり心細くなって呼んだんだと思ったのにね。///////”
だから、早く戻ってあげなくちゃって、
そうと思っての荒療治に出たっていうのに、
イエスはイエスで、ブッダが心配で叫んでしまったのだと言う。
いつまでも見くびってちゃあいけないねと反省しつつ、
“返事がしたらば飛んで来るつもりでもいたのかなぁ。”
そこまで思ったら、今度は何だか面映ゆくなってしまい。
自分の前へと引き寄せていた、
琥珀色の麦茶を満たしたグラスを見下ろしておれば。
「ぶっだ? どうしたの?」
にこにこ微笑って話を聞いててくれたお人が、
不意に俯いてしまったものだから。
何か禁忌でも思い出したか、
それとも戒律に触れるよなこと、させちゃったかなと。
生真面目な伴侶様のスイッチが
どこへ入ったかを見定めたくてか、
お隣同士になるように、
座ったまんまでずりりとイエスが寄って来て。
「ブッダ?」
「……や、あの…。//////」
いかんな、何て言えばいいの。
妙な妄想しちゃっただけなのに。
いつぞやに
怖いくらいの閃光に転変して飛んで来てくれたのを
ふと思い出しただけ。
ああ、あの時はとてもドキドキしたなぁ。
場合が場合じゃなかったら、
感極まって こっちから抱き着いていたかもしれない。
(実際は抵抗しまくったんだけど…。)笑
ちろっと見やったお顔はといや、
端正なのにお髭が似合う、仄かな精悍さの上へ、
今だけちょっぴり、
ブッダを案じての憂いが心細げな雰囲気を醸していて。
そんなして のぞき見したのが届いたか、
「ブッダ。」
ちゃんとこっち見てよと二の腕をそおと捕まえられると、
ああ早くも胸の鼓動が高まり出してしまい。
怖ず怖ずと視線を上げれば、
空いてた方の手で茨の冠を外し、
そのままおでこ同士をこつんこしてくる彼であり。
内緒ごとは無しよという無言の抗議と判っているので、
「私は、あのね? 嬉しかったんだよ?」
そんな風に内実を吐露してしまうのも、
もはやしょうがないことで。
「だってイエスがあんな大きい声で呼んでくれたし、
息せき切って駆けつけてもくれたでしょう?」
ちゃんと返事をしているというに、
イエスの表情は動かないまま。
それどころか、
こちらの瞳を愛しくてたまらぬと覗き込んでいる彼で。
え?と瞬きを返せば、ふふと微笑ったのが何とも甘く。
そのまま瞼が降りてゆくのへ、
“あ…。/////”
気づいたけれど もう遅く、
微かに泳いだ眼差しも、も一度絡まったイエスの視線に促され、
そおと降りてくしかないのを自覚しただけ。
気がつけば、その腕に肩や背がすっかりと掻い込まれてもおり、
ふわりと立ちのぼるオレンジの匂いが
おいでおいでと健やかに誘う。
間近になった頬の微熱へ、ますますとお顔が熱くなり、
それでも鼻と鼻とが触れ合うくすぐったさには、
思わずのこと、小さな笑みを返せたけれど。
なに?
だって。///////
イエスって律義だなってと、呟いたのが半分くらい封じられ、
甘い吐息つきの口づけに、あっと言う間に翻弄される。
不安もドキドキも、心配要らないよも大好きだよも、
全部全部を掻き混ぜて飲み込んでしまおっか、なんて。
いつの間にか引き倒されてしまってたブッダの視野の中、
悪戯っぽく微笑ったイエスの
玻璃色した眸が笑って告げてた、
七夕間近い 昼下がりのひとときだった。
〜Fine〜 14.06.23.〜 07.21.
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*いやはや、思ってたより長引いてしまってすいません。
急にどたばたとプライベートが忙しくなり、
集中が途切れまくりだったのと、
ややこしいネタを消化したくて盛り過ぎたのが敗因でしょうか。
本来のというか、
ウチのお話は、どっちかというと
このおまけみたいに、何てことないやりとりや、
甘い甘い睦みのいろいろを
恥ずかしげもなく書き散らかすほうが
こちらとしても楽しいのですが、(おい)
なにぶん、集中しにくいわ、この夏も暑いわで、
ちょこっと方向を見失っておりました。
とりあえず、七夕もとっくに過ぎたことですし、(笑)
充電してまた何か書き始めると思いますので、
その折は またお付き合い下さると幸いです。
それではではvv
めーるふぉーむvv


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